地元への貢献
WHO神戸センターは1995年、神戸グループの強力な支援を受けてWHO執行理事会の決議により設立されました。神戸グループは、兵庫県、神戸市、神戸商工会議所、神戸製鋼から成り立っています。WHO神戸センターがWHO本部の一部門であると同時に、地元からの多大な支援を受けて設立に至った点を踏まえ、WHO神戸センターの活動はグローバルとローカルの両方にまたがっています。地元への貢献は、次の3本柱で行っています。
WHO神戸センターの地元貢献活動
- 各国が持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて努力する中、国内外で得られた教訓を共有し国際的な連携を奨励
関西地方で得られた教訓をWHO神戸センターの研究活動に活かすため、関西地方の研究機関との共同研究プログラムを立ち上げました。また複数の国際会議を開催するとともに、WHO災害・健康危機管理に関するグローバルリサーチネットワークを支援しています。
- 地元のコミュニティに向けて、WHO神戸センターの研究活動に関する情報を発信
WHO神戸センターの研究で得られた知見や研究結果ついての情報発信を強化するため、神戸グループと連携し年に3回以上「WKCフォーラム」を主催しています。また地元の人々に向けてTwitterやYouTubeを活用し、ウェブサイトにおいても日々日本語で情報を提供しています。地域のメディアにも働きかけながら、WHO神戸センターの活動について知ってもらうためのメディア活動も行っています。
- 保健医療に関する意識向上や政策提言を通じて、神戸市と兵庫県のコミュニティに貢献
保健医療分野において神戸市と兵庫県に貢献する活動の一環として、WHO神戸センターの職員は感染症や非感染性疾患から緊急対応に至るまで、数多くの専門委員会に出席しています。また、WHOアウトブレイクレポートの日本語版も発信し、2020年は特に新型コロナウイルス感染症に関するWHOの技術的ガイダンスと一般向けの情報の翻訳に注力しました。新型コロナウイルス感染症に関するWHO神戸センターのウェブページはこちらをご覧ください。さらに、関西地方の小中学校・高校や全国の大学で、WHO及びWHO神戸センターに関する講義も行っています。講演のご依頼はこちらまでお問い合わせください。
地元貢献の重要性
WHO神戸センターは、活気あふれる健康な地元コミュニティの一員として貢献していけるよう活動しています。
最新の活動については下記をご覧ください。

WKCフォーラム「Our planet, our health-私たちが考える地球規模の健康課題」開催の報告
今年の世界保健デーのテーマである「Our planet, our health(私たちの地球、私たちの健康)」に因んで、高校生と大学生が未曽有の感染症、高齢化、災害危機管理など様々なグローバルヘルスの課題について学び、議論する機会となるWKCフォーラムを2022年9月25日に開催しました。
基調講演では、公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金CEOの國井修先生より、これまで海外で医療活動に携わって来られたベースとなる志と情熱をお話いただきました。学生からの多くの質問が出て、そのひとつひとつにご丁寧にお答えいただきました。その後のパネルディスカッションでは、国境なき医師団の蟹江信宏先生や大学生、高校生とWKCスタッフがウェルビーイングについて議論しました。12のテーマで開かれた分科会では、今回のフォーラムに先立ち3週間にわたって開催された「WHOサマースクール」の参加者およびinochi WAKAZO projectの学生たちが、各分科会を担当しました。分科会では、担当学生がそれぞれのテーマに関する研究内容についてのポスター発表を行い、その内容をもとに各分科会に参加する学生達とディスカッションを行いました。
本フォーラムは、inochi WAKAZO projectとの共催で約220名の全国の学生、一般市民の参加を得ました。ご参加をいただき、ありがとうございました。
尚、当日のフォーラムの録画動画(約2時間20分)を10月末まで公開しております。どうぞご視聴ください。
【開催概要】
日時:2022年9月25日 (13:00–16:10)
会場:WEB会議システムによるオンライン参加(Zoom)
参加費:無料(要事前登録)
主催:WHO健康開発総合研究センター(WHO神戸センター)
共催:inochi WAKAZO project、WHO神戸センター協力委員会

京都大学大学院医学研究科国際保健講座で講義
WHO神戸センターのローゼンバーグ恵美技官は、10月12日(木)に京都大学大学院医学研究科の国際保健講座で、教育・貧困・経済と人々の健康と健康格差の関連について英語で講義を行いました。同講座でこのテーマに関する講義をローゼンバーグ技官が担当するのは今回で7回目となります。25名の履修生は、主に公衆衛生学や医学部の学生で、その大半が海外からの留学生でした。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防接種状況において世界各国の間に見られる格差を表すデータなども示しながら、様々に顕在化する健康格差とその社会的決定要因についてお話しました。
災害・パンデミック後の長期的なメンタルヘルスの経過に関するシステマティックレビュー
災害後に生じるメンタルヘルスの課題は、いかなる人にも起こり得ます。今年の世界精神保健デーでは、災害の直後だけでなく、災害発生から時間が経過している場合のメンタルヘルスについて、特に子どもや青年にフォーカスし、考えていきます。
WHO神戸センター(WKC)が資金提供した研究により、過去に起きた緊急事態や災害が、現時点での精神衛生に与える影響の大きさが明らかになりました。カーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士が率いる多国籍チームは、英語、中国語、日本語で示された200以上の研究の結果を統合し、うつ病と不安の割合が災害後何年も高いレベルを維持し、特に子供や青年ではその割合が著しいことを示しました。
「平均して、災害の影響を受けた人々の24%が、曝露後の最初の6ヶ月間に臨床的に重要な心的外傷後ストレス症候群(PTSS)を発症し、28%がうつ症状を発症し、23%が不安症状を発症する。」
このように多言語で行われたシステマティックレビューは過去に前例がありません。メンタルヘルスの有病率は経時的に緩やかな改善を示しましたが、有病率の変化はメンタルヘルスのタイプにより異なることが明らかになりました。PTSSの有病率は暴露後数年で有意に改善し、回復の経過に関して年齢による差は観察されませんでした。
しかし、うつ病と不安症状の有病率は災害後何年も高いレベルを維持し、子供と青年は大人と比較した場合、災害直後またその後何年も、有意に高い率を示しています。
「これらの研究結果は、被災地において、子どもや青年の心理的ニーズを配慮した持続可能なメンタルヘルスケアシステムを確立する必要性を示している。」
地震とパンデミックは、心的外傷後ストレス症状(PTSS)の高い有病率と関連しており、この結果は、地震の多い日本には特有なリスクがあることを示しています。そのため政策立案にあたっては、災害の物理的・社会的側面への迅速な対応を検討する必要があります。この研究は、復興の初期段階や災害から数年経過した段階において、PTSS、うつ病、不安症状に対処するために、適切な介入が必要であることを示唆しています。
研究結果はこちらでご覧いただけます。
主席研究員であるカーティン大学のエリザベス・A・ニューナム博士からの説明をご覧いただけます。こちら
Elizabeth A. Newnham, Enrique L.P. Mergelsberg, Yanyu Chen, Yoshiharu Kim, Lisa Gibbs, Peta L. Dzidic, Makiko Ishida DaSilva, Emily Y.Y. Chan, Kanji Shimomura, Zui Narita, Zhe Huang, Jennifer Leaning, Long term mental health trajectories after disasters and pandemics: A multilingual systematic review of prevalence, risk and protective factors, Clinical Psychology Review, Volume 97, 2022.
- School of Population Health, Curtin University
- Curtin enAble Institute
- Asia Pacific Disaster Mental Health Network

神戸学院大学で講義
当センターのローゼンバーグ恵美技官は、10月6日(木)に神戸学院大学法学部の学生を対象に、国際保健分野におけるWHOの役割とユニバーサルヘルスカバレッジへの取り組みについてオンライン講義を行いました。とりわけ同学部の山越裕太准教授による研究論文、『世界保健機関の内的変容と課題~財政、ネットワーク、新型コロナウイルス感染症』を引用しながら、2000年頃を境としたWHOの役割や立場の変化、それと関連する財政事情、また、この度のパンデミックにおいて果たした役割などについてお話しました。

日本赤十字広島看護大学で講義
当センターのローゼンバーグ恵美技官は、9月16日(金)に日本赤十字広島看護大学の3年生を対象に、WHOの役割や国際救援看護師に求められる能力などについてオンライン講義を行いました。同講義は、国際救援や開発協力に関わる国際機関の活動と役割を理解することを目的に、普段は国際赤十字の活動拠点のあるスイス・ジュネーブで同大学が行っている研修の一部ですが、今年はパンデミックとウクライナ人道危機によって国際的な移動の安全が確保できないことから日本でオンライン形式で行われています。